愛別離苦【男2:女2】

題名『愛別離苦』
声劇用 男性2名女性2名 50〜60分程度


都築 唯成(つづき ただなり):父。39歳。建築デザイナー。口数は少ないが優しい。
都築 奈那子(つづき ななこ):母。39歳。専業主婦。明るく優しく、家族を愛す。
都築 拓海(つづき たくみ):息子。16歳高校生(話中で22歳)。芯が強く賢明。
都築 小春(つづき こはる):娘。13歳中学生(話中で20歳)。朗らかで素直。


*タイトルの「愛別離苦(あいべつりく)」とは…
愛するものとの別離のつらさ、特に親子・兄弟・夫婦など、愛する人と生き別れたり、死に別れたりする苦痛や悲しみのこと。仏教でいう八苦(八種の苦しみ)の一つ。

以下をコピーしてお使いください


題名「愛別離苦」

作:みつばちMoKo

都築 唯成:

都築 奈那子:

都築 拓海:

都築 小春:

https://mokoworks.amebaownd.com/posts/37210194/



001 唯成M:君に会えてなかったら、僕はここにいなくて。


002 奈那子M:あなたに会えてなかったら、この手は繋がれていなくて。


003 唯成M:君のやりたいことはすぐ叶いそうなものばかりだ。僕は叶えてあげられるのだろうか。



【水族館にて】


004 小春:お母さぁーん。早くー。


005 奈那子:はーい。ちょっとお父さん、この荷物持って。


006 唯成:はいはい。って荷物多くない?


007 奈那子:だって念のためって色々詰めてたらこんなになっちゃった。


008 唯成:それは置いていっていいんじゃない? レンタカーに。


009 奈那子:さすがお父さん。


010 唯成:こういう時だけ褒める。


011 拓海:小春ー。走るなー。  なんかお腹すいた…。


012 奈那子:じゃああとで何か食べましょ。あっでも明日はこっちの美味しいもの食べる予定だから控えめにね?

さぁ行きましょ。会いに行きましょう、ジンベイザメに。


(少し間を取る)


013 拓海:……うわぁ。でっけー。


014 小春:ほんと。何メートルぐらいあるの…?


015 奈那子:んー、お父さんとお母さんと拓海と小春の身長足してもまだ足りないんじゃない?


016 小春:あっちにもいる。


017 唯成:こら、あんまり一人で遠くに行ってはぐれるなよ。


018 奈那子:はぁー。すごいね…。おっきい。


019 拓海:母さん、なんでジンベイザメにこだわったの?

今回の旅行、ここだけは絶対行きたい、外せないって言ってたけど。


020 奈那子:ずっと前にね、ジンベイザメがただずっと泳いでるだけの映像を見たの。

電気屋さんにあった大きなテレビに映ってたんだけれど。

大きな水槽の音とジンベイザメのゆっくり泳ぐ姿。だたそれだけの映像なんだけれど。

……なんか涙が出てきちゃって。


021 拓海:泣いたの?


022 奈那子:ふふ、そう。外だったんだけどね。

ジンベイザメって大きいから怖いかと思ったらそうじゃないでしょ?

泳ぐスピードもサメっていう単語からは想像もつかないぐらいゆっくりだし。


023 拓海:性格も優しいんだって。


024 奈那子:そう。あとね、小さい魚がくっついてるでしょ。

魚たちにとっては自分は大きい魚に食べられないし、おこぼれも貰えるし、…でジンベイザメにくっついてるのが好都合だからなんだけれど。

私がその映像を見た時はね、ジンベイザメが自分の身をもって魚たちを守ってるように見えたの。この世界のすべての敵から守ってるような。大きな大きな愛で。すごいなーって。

そう思ったら自然に涙が出てきちゃってた。


025 拓海:そうなんだ。


026 奈那子:だからね、いつかここのジンベイザメを見に行きたい、会いたいってずっと思ってたの。


027 拓海:じゃあ今日来れてよかった?


028 奈那子:うん、ほんと来れてよかった。……会えてよかった。


029 拓海:ちなみに、それの映像見たのっていつごろ?


030 奈那子:えーとね……。もうだいぶ前。 拓海がお腹にいた頃だもの。


031 拓海:え、俺もいなかったの。


032 奈那子:ふふ、うん。だから今こうして拓海と一緒にジンベイザメを観てるのは不思議な気分。

あっ、もし早く他のとこも見たいなら、お父さんたちと一緒に回っておいで。お母さん、まだここにいるから。もうちょっとジンベイザメを見てる。


033 拓海:わかった。じゃ先に行ってる。


034 奈那子:あとで追っかけるからね。 あっ、走らないでよ〜。

……初めまして、ジンベイザメさん。あのときはありがとう。

あなたのおかげで今の私と家族があるのよ。


035 奈那子M:そんなふうに心の中で話しかけていたら、水槽の中のジンベイザメと目があった気がした。こちらに向かって泳いできて、その大きな体で「どういたしまして」と言われたような気がした。



【飲み屋にて(拓海22歳・小春20歳)】


036 小春:お母さん、何にするの? ビール?


037 奈那子:んー。ビールじゃなくっておしゃれなものがいい。


038 小春:おしゃれなもの??


039 奈那子:だからカクテル…とか?


040 小春:私もよく分かんないから、お兄ちゃん選んであげて。


041 拓海:えー?何がいいんだ? ……じゃあ、これなんかどう?


042 奈那子:……うん、これにする。


043 小春:私、これがいい。


044 拓海:すいませーん。これとこっちと、あとビール、でお願いします。


045 奈那子:ふふ。なんか緊張する。


046 小春:なんで?


047 奈那子:夢だったの。 あなたたちが大人になったら一緒にお酒を飲むの。


048 小春:そうなの?


049 奈那子:もちろん拓海は先にお酒を飲める年齢になってたけど、どうせなら小春も二十歳になって一緒にみんなで飲めたら素敵だろうなって思ってた。

だからこうして今、夢が叶ってることが信じられなくて緊張っていうかドキドキしてる。


050 拓海:父さんは今日いないけどな。


051奈那子:ふふ、まぁね。

小春は専門学校の友達と約束あったんでしょ? そっちに行かなくて良かったの?


052 小春:んーまぁ友達とはいつでも遊べるからさ。それに、お母さんがこんなふうに誘うなんて珍しいじゃん。せっかくだからと思って。


053 奈那子:あら。そんなふうに思ってくれるなんて。

拓海は最近どう?大学。まぁ単位は落としてないみたいだけど?


054 拓海:普通だよ。


055 小春:普通ってなに? お兄ちゃん。


056 奈那子:楽しい?


057 拓海:……まぁまぁ。


058 奈那子:何か悩んでることとかない?


059 拓海:……別に。


060 奈那子:そういうとこ、お父さんにそっくり。


061 小春:ほんとそっくり。


062 拓海:……どういうとこが?


063 奈那子:ほら、気づいてないとこもそっくり。


064 小春:ね〜。あっ飲み物きたー。


065 奈那子:じゃあ、二人ともグラス持って。 ふふ、かんぱーい。


066 小春:かんぱーい。


067 拓海:…乾杯。


068 奈那子:あっこれ美味しい! 私の好きな味だわ。


069 拓海:当たり前だろ、俺が選んだんだから。母さんが好きそうなやつ。


070 奈那子:……やだちょっと。息子なのにキュンってしちゃったじゃないの。


071 拓海:は?


072 奈那子:やだ、無自覚?


073 小春:お兄ちゃんってそういうとこあるよね。


074 拓海:うるせ。


075 奈那子:私、知ってるの。拓海は優しいんだよね。

今日だってちゃんと予定空けておいてくれたしね?二人とも優しくていい子に育ってくれて良かったなぁ。そりゃあ反抗期もあったし、不安で大変なこともあったよ。大人なったらどんな人になるんだろうって心配もしたけれど。

今、ここに一緒にいてくれてることでチャラ。お母さんは幸せよ。


076 小春:もう酔ったの?


077 奈那子:ふふ、まだ大丈夫よ。


078 小春:お兄ちゃんはまだ反抗期のような気がするけれど?


079 奈那子:たぶん、ずっとこんな感じで生きてくのよ、拓海は。でも、何か守るべきものができたとき、変わると思うの。お父さんもそうだったもの。


080 小春:ね、お父さんって若い時もあんな感じだったの?


081 奈那子:ううん、もっとぶっきらぼうで自分に自信がなくて。

優しいのは変わらないけれど、それを表には出さない人だった…かな。


082 小春:お父さんとお母さんって、学生の時から付き合ってたの?

お兄ちゃんが生まれたのってお父さんが卒業してすぐって聞いた。


083 奈那子:話したことあったっけ?

そう。お父さんが大学生の時バイトしてたカフェでお母さんもバイトしてたの。

建築家を目指しててね、でも周りと比べると自分の評価が低くていつも悩んでた。

ご家族の反対を押し切ってその道に進もうと決めたせいもあって、戻るにも戻れなくって。


084 小春:へえ、そうなんだ。お父さん、悩みとかなさそうなのに。


085 奈那子:ふふ。口数少ないからそういうふうに見られるんだよね。当時は自己否定の塊だったのよ。


086 小春:今はそんなことないよね。お母さんのこと大好きだし。


087 奈那子:まぁ色々あって結婚することになって今のお父さんになった。


088 拓海:だからなのか…。


089 奈那子:え?


090 拓海:父さん、俺がプログラミングやりたい、それを仕事にしたいって言っても反対しなかった。なんとなく自分と同じ建築分野に進んで欲しいのかと思ってたから。


091 奈那子:お父さんは反骨精神みたいなもので生きてきたから。

それはすごいエネルギーがいることだし大変だったから、拓海にはそんな思いさせたくなかったんじゃないかな。だから私、お父さんに相談してごらんって言ったでしょ?


092 拓海:反対されるかと思った。でもなんか嬉しそうだった。そうか、そうかって言ってたな。


093 小春:相談されること自体が嬉しかったんじゃない?


094 奈那子:うん、そうだと思う。お父さんは相談すらさせてもらえなかったからね。


095 拓海:そっか…。


096 奈那子:自分でしたいことが分からない若者も多い時代でしょ。でも、自分がやりたいことが決まってるってこと自体幸せなことじゃない?


097 拓海:やりたいことを突き通すっていうのは父さんに似たのかな。


098 奈那子:そうかもね。


099 拓海:俺自身も色々大学とか調べてたんだよ。でも相談したあとに、色々資料持ってきてくれたりしてさ。なんか父さん自身が受験するみたいな感じで。


100 奈那子:そんなことしてたの?


101 拓海:何か形に残せる仕事ができるようになれって言われた。父さん自身も建築家として自分の仕事が形に残るからなのかな。


102 奈那子:そうかもね。


103 拓海:いつか父さんに胸を張ってこれ俺がやった仕事なんだよって言えたらいい。

……頑張るしかないな。


104 奈那子:お父さんに感謝しなきゃね。


105 拓海:うん。


106 小春:お母さん? なんか…泣きそう?


107 奈那子:あれ? あー…なんかちょっと酔ってきたのかも。 ふふ、色々思い出しちゃった。あーほんと今日一緒に飲めて良かった。

お父さん仕事で来れなかったけれど、かえって良かったかも。

これからもお父さんのこと、大事にしてあげてね。あなたたちのこと、大好きなのよ。

ずっとずっと見ててあげてね。気にしてあげてね。


108 小春:どうしたの?お母さん。本当に。


109 奈那子:なんでだろ…。たぶん、嬉しいの。うん、そう。

ありがとね。今日一緒に飲んでくれて。……本当に…ありがとう。


110 拓海M:母さんがなぜ涙ぐんだのかはわからないけれど、今日こうやってお酒を飲む機会があって良かったと思った。なんだか心があったかくなった日だった。



【カフェにて(小春20歳)】


111 奈那子:いらっしゃいませ。


112 小春:いらっしゃいましたー。お母さん、サマになってるじゃん。


113 奈那子:そう?


114 小春:まさかお母さんがカフェやりたかったなんてね〜。


115 奈那子:不思議?


116 小春:まぁでも納得かな。お母さんの作るご飯も、お母さんの淹れたコーヒーも美味しいもん。


117 奈那子:昔、カフェでバイトしてたの。その時にね、いつか私もこんなカフェ開きたいな〜って思ってたの。


118 小春:お父さんがデザインしたお店だしね。


119 奈那子:だってやるなら絶対お父さんの作るお店がいいって決めてたから。


120 小春:そんなお父さんは今日来ないの??


121 奈那子:あとで来るはずだけれど。


122 小春:せっかくの開店記念日なのにね。


123 奈那子:他の仕事と重なっちゃったみたいよ。 で、オーダーは何にするの?


124 小春:んーと何がおすすめ??


125 奈那子:もちろん、こだわったコーヒーは絶対飲んで欲しいけど…。

一緒にケーキも食べる? 本日のケーキはチーズケーキよ。


126 小春:わっ、やった!お母さんのチーズケーキ大好き!そのセットでお願いします!


127 奈那子:かしこまりました。では少々お待ちくださいませ。


(コーヒーを淹れる)


128 小春:お母さん。カフェやりたかった理由って……本当は何?


129 奈那子:なんかお見通しな感じ?


130 小春:そういうわけじゃないけれど…ね。


131 奈那子:私ね、社会人の経験ほとんどないの。さっきも言ったけど、カフェでバイトしてたことぐらいしかなくて。

卒業してすぐ出産したからそれからずっと主婦と子育てしてて。だからきちんと働いてみたかったっていうのが本心。あと、カフェ経営なんてカッコよくておしゃれでしょ?っていうのが本音。


132 小春:確かに。私、友達にも自慢できるもん。


133 奈那子:それにね、お母さん、人のお話聞くのが大好きなの。

カフェのカウンターでコーヒー淹れながらいろんなお客さんのお話聞きたいなぁって。


134 小春:ふふ、お母さんらしい。


135 奈那子:はい、お待たせしました。本日のブレンドコーヒーとチーズケーキです。


136 小春:わっ美味しそう!食器も可愛い! いただきまーす。


137 奈那子:どう?美味しい?


138 小春:んー、めっちゃ美味しい〜。これ、お店の一番人気になるかもね。


139 奈那子:ほんと? 良かったぁ。


140 小春:うん。……ね、お母さん。


141 奈那子:なぁに?


142 小春:さっきお話聞くの好きって言ってたでしょ?


143 奈那子:うん、好きよ。


144 小春:えーとね、そう、友達! 学校の友達が悩んでてね?

それで女の先輩であるお母さんに聞いてみようかなって思ってね?


145 奈那子:ふふ、そうなの? そのお友達、どうしたの? もしかして…恋愛相談?


146 小春:んーとね、なんかほっておけない人がいるみたいなんだよね。 それが好きっていう感情なのか分からなくて。


147 奈那子:相手の男性も同じ学校の人なの?


148 小春:うん、そう。あっ、友達のね!そうみたい!


149 奈那子:その…お友達はさ。そのお相手の男性と一緒にいると楽しい?


150 小春:うん。


151 奈那子:なんかやっちゃいそうで目が離せない?


152 小春:うん。


153 奈那子:困ってたら助けてあげたい?


154 小春:うん。でもそれだったら友達と一緒だよね?


155 奈那子:じゃあ…その男性が自分以外の女性と二人でどこか行ってても平気?


156 小春:……平気じゃない。嫌な気持ちになる。


157 奈那子:ふふ。そっか。 大丈夫、そのお友達はちゃんとその彼のこと好きよ。


158 小春:そうなの? ……そっか。好きなんだ。


159 奈那子:昔からね、小春は面倒見がいいの。だからちょっとやんちゃな子とか、すごく大人しい子とかほっとけなかったでしょ。


160 小春:確かに。


161 奈那子:でもそれが恋愛感情なのかは、相手の男性の救いを求める人が自分以外だと悲しいって感じると思うんだよね。…ってお友達に言っておいてね。


162 小春:あ…うん!そうね、言っとく。 そっかぁ、お母さんもそう?


163 奈那子:え?


164 小春:お母さんもお父さんにそう感じる?


165 奈那子:そうだね。ふふ、小春は私に似たのかもね。でもなんか嬉しいな。自分の子どもと恋バナできるなんて。


166 小春:そう?


167 奈那子:家族で好きな人の話をしない家庭もあるじゃない?お母さんの家庭もそうだったの。結構厳しい家庭だったから。当時は親子でそういう話をしてる友達が羨ましくってね。

だから、夢みたい。


168 小春:夢とか大袈裟だよ。


169 奈那子:そんなことないよ。夢よ。叶って良かった。

小春には愛を与える人になって欲しい。


170 小春:愛を与える?


171 奈那子:うん。愛を乞う人じゃなくって与える人。

女性ってね、愛されることに喜びを感じる人が多いんだって。だから愛されて結婚する方が幸せだとかいうし。

難しいと思うけれど、小春ならそれができると思うんだ。大きな大きな愛で相手を包んでほしい。


172 小春:私にできるかな?


173 奈那子:できるよ。お母さん、未来がみえるの。

お兄ちゃんにもお父さんにも、いつか結婚する人にも、愛を与える小春が。

それを無理なく自然にする小春が。


174 小春:お母さんみたいに?


175 奈那子:え?


176 小春:お母さんこそ、そういう人だよ。


177 奈那子:小春にはお母さんがそう映ってるの?


178 小春:うん。お母さんこそ、愛を与える人だよ。


179 奈那子:そう…。じゃあお母さんそうやって生きてきて良かったんだね。良かったわ。

……ほんと良かった。 あっ。


180 唯成:遅くなってすまない。


181 小春:お父さん。


182 奈那子:いらっしゃい。


183 唯成:ん? なんだ? なんか真面目な話?


184 奈那子:ふふ。お父さんには内緒。


185 唯成:なんでだよ。


186 小春:だって恋バナしてたんだもーん。


187 唯成:恋バナだって?


188 奈那子:いいでしょー。


189 唯成:え。なんか複雑だな。話に混ぜてほしいけど…、娘の恋愛話を聴くのは…。


190 小春:へぇ、お父さんもそういう感情抱くんだ。


191 奈那子:娘が嫁に行くとき号泣するタイプかもよ。


192 小春:かもね。


193 唯成:いや泣かないって!……泣か、……泣く…かも。


194 奈那子:ふふ。これは泣くね。


195 小春:お父さんはお母さんから愛をもらってるよね?


196 奈那子:ちょっと!小春!


197 唯成:愛? どうしてそんな話になったのかわからないけれど…。

もらってるよ、愛。たくさん大きな愛を。…愚問だな。


198 小春:ほらね。


199 奈那子:お父さん…。


200 唯成:どういうこと?


201 小春:ふふ。私もお母さんみたいになりたいってこと。ね、お母さん。


202 奈那子:もう、ちょっと小春!…泣いちゃいそう。

……ありがとね。ありがと。


203 小春M:ちょっとだけ涙目になったお母さんはいつの間にか私の理想とする人になっていた。待っててね。愛を与える人になるから。見ててね、お母さん。



【花火大会にて】


204 唯成:この場所、よく取れたな。綺麗に見れそう。


205 奈那子:年に一回の大イベントだもん。隣町とはいえ、地方からこの花火大会のためだけにこんだけの人が集まるんだからすごいよね。


206 小春:お兄ちゃんがね、友達とかに聞いてこのビューポイントみつけたらしいよ。だから場所取りも張り切ってたし。


207 唯成:で、その拓海は?


208 奈那子:ここで合流することになってる。本人は場所知ってるしね。


209 唯成:おっ。始まった。


210 小春:初めは可愛いのだね。


211 奈那子:ほんと。ほら見て、ハートの形してる。


212 小春:あっ、こんどはニコって笑った顔。


213 奈那子:今はいろんな花火があるのね。


214 拓海:迷子になるとこだった。


215 小春:あっ来た。ギリギリセーフってとこだね。


216 拓海:うるせ。まだ始まったばかりだろ。


217 奈那子:まぁまぁ座って。後ろの人の邪魔になるから。


218 拓海:花火の音ってこんなにデカかったっけ?


219 小春:ここが花火に近いからじゃない?でもこの音があるから生で見てるって感じする。


220 拓海:そうかもな。


(花火に見入る。少し間を取る)


221 奈那子:綺麗…。


222 小春:花火見てると、無言になっちゃう。こんな大きな花火大会は来たことなかったね。


223 奈那子:友達や恋人と来たかった?


224 小春:そうね、来てみたいかなぁ。


225 奈那子:ごめんね、今日はお母さんに付き合わせて。今年来ないと今度はいつ来れるか分からないから。


226 拓海:まぁ、いつか誰かと来るための下見ってことでいいんじゃね?


227 唯成:家族で見るのもいいもんだと思うぞ。


228 小春:そうだね。こんな機会滅多にないしね。


229 奈那子:わっ、みた? 今のすっごい大きかったね。すごーい…。


230 拓海:今の虹みたいじゃね? 色がいっぱいあって。


231 小春:ほんと虹みたい。


232 奈那子:こんなにカラフルだったっけ、花火って。

いいな〜夜空にたくさんの色。虹色だ。本物の虹なんて最近見てないね。

お母さん、虹みたいにキラキラで綺麗でいたいなぁ。ずっと消えるまで綺麗な色で…。

ずっとずーっと。

そういえば大きい花火大会はお父さんと来た以来かも。


233 小春:そうなの?


234 奈那子:ね、お父さん。


235 唯成:あぁ、そうだな。


236 奈那子:まだ結婚する前。こんなに大きな会場じゃなかったけどね。


237 唯成:母さん、浴衣着てた。


238 奈那子:ふふ、下駄で靴擦れしてね。ありきたりだけど。

お父さん、絆創膏買ってきてくれてね、おんぶするって言ってくれたんだけれど、私が恥ずかしくって。人通りが少なくなってからおんぶしてくれたの。


239 小春:へぇ、お父さんやっさし〜。


240 拓海:かっこいいじゃん。


241 奈那子:ふふ、言ったじゃない、お父さんは優しいのよ。あっ照れてる。


242 唯成:照れてない。


243 奈那子:あとね、私が小さい頃に家族で一度花火大会に来たことがあるの。そのとき、迷子になった。


244 拓海:えっまじで?


245 奈那子:迷子の放送流れたもん。


246 唯成:その話、昔聞いたな。


247 小春:お母さん、花火大会にいい思い出ないじゃん。迷子になったのと靴擦れと。


248 奈那子:そうなんだよね。でもだからなのかな。すっごい記憶に残ってて大切な思い出になってる。

今日のも含めて、全部“家族“の思い出なの。

小さいころは私を育ててくれた家族との思い出。

お父さんと来た時はこれから家族になる人との思い出。

そして、今日は私の愛する家族との思い出。


249 唯成:そうか…。母さんの人生の記憶に残るのは“家族“なんだな。


250 拓海:おっ、すっごいたくさん上がってる。


251 奈那子:あっ、今の…。


252 唯成:母さんの好きな「しだれ柳」だ。


253 小春:しだれ柳?


254 唯成:花火の名前。


255 奈那子:そう。花火が上がって開いたあとすぐに消えないで、花弁が下がるようにしばらく残ってる花火。


256 唯成:正式な名称は「錦冠菊(にしきかむろぎく)」っていうんだったかな。


257 拓海:余韻がすごいな。


258 奈那子:そうなの、なんか長く夜空に残ってて切ない感じもするでしょ。だから好き。


259 小春:これ見ると、フィナーレなんだなって感じる。


260 拓海:そうだな。


261 唯成:でも今日はまだ続くよ。一旦の区切りだと思う。


262 奈那子:じゃあまた見れるのね。


263 小春:あー、しだれ柳だけずっと上げ続けてくれないかな。


264 奈那子:あっ小春も好きになった?


265 小春:え、ずっと前から好きだったよ。


266 奈那子:ふふ、やっぱり私に似たのかな。


267 小春:これ好きな人多いよ? でも似てるんだと思う。


268 奈那子:今日、家族全員で来れて良かった。 こんなことたまにしかできないもんね。


269 拓海:俺もこれてよかった。


270 奈那子:夏休みの予定に花火大会を提案したお母さん、偉いでしょ?


271 小春:お母さん、正解!偉い!


272 拓海:父さんなんて結構張り切って休みとってた。


273 唯成:一生に一度は見てみたいだろ、今日のは。


274 奈那子:そう、一生に一度。 もう見れないかもしれないから、目に焼き付けとかなきゃ。


275 唯成M:そう言って、まるで何か集中するように広い夜空に次々に上がる花火をずっと見ていた彼女の横顔はとても綺麗だった。本当に一生に一度かもしれないと思っているのだろうか。ひとつひとつの花火を瞼のシャッターを切って記憶に刻みつけているようだった。



【大学キャンパス構内にて】


276 奈那子:はぁー懐かしい。


277 唯成::ほんとだな。


278 奈那子:卒業して以来?


279 唯成:そうだな。


280 奈那子:勝手に入っていいのかな。


281 唯成:大学なんていろんな人が出入りしてるだろ。

それに卒業生なんだから入ってちゃダメなんて言われないよ。


282 奈那子:そっか。

あっ、あそこの段差に座ってよく話してたよね。


283 唯成:待ち合わせ場所でもあったからな。


284 奈那子:だから一番記憶に残ってる場所だね。

お父さん、当時は悩みまくってたよね。……死にたいって思ってたし。


285 唯成:……あぁ。


286 奈那子:ご家族に反対されて、学内のコンペでもうまくいかなくて。


287 唯成:そうだな。誰のことも信用できなくなってた。友達も先生も家族も。

自分の存在意義さえ無いものだと思ってたしな。


288 奈那子:暗かったよ〜あの頃のお父さん。

でも単に励ますだけじゃ生きる気力さえ戻らないような気がして。

私に何かできるか分からなくて……。ただ一緒にいるだけしかできなかった。


289 唯成:それが心地よかった。心配して声をかけてくれる人もいた。

楽しいことしようって遊びに誘ってくれたり、旅行を計画してくれたりした。

どれも行く気にはならなかったけどな。


290 奈那子:世間の流れは知っておいてほしいと思って、今日こんなことがあったとか誰がこんなことしたとかそんな報告ばかり。


291 唯成:あぁ。そのおかげでまだ自分が生きてるんだってことを知らされた。

あのとき一緒にいてくれなかったら、今の僕はいない。ありがとう。


292 奈那子:ふふ、こちらこそ。

だって、あのとき……。そう、あれもこの場所だったね。

あなたの家の電球が切れかかってて、それを電気屋さんで買ってきたあとだった。

私が言ったんだよね。「自分一人のためじゃなく、誰かのために生きてみない?」って。


293 唯成:その誰かがお腹にいる拓海のことだった。


294 奈那子:私もね、お父さんはまだ学生でお金もない、家族には頼れない、一人で育てていけるだろうかってすごく悩んでて。どうしようって不安で覚悟も何もできてなかった。

そんな時ふと街角でジンベイザメが小さい魚と泳いでる映像見てね…、私もこんなふうに穏やかに子どもを守っていきたいって思ったの。まあ魚たちはジンベイザメの子供ではないんだけどね。


295 唯成:そうだったんだな。いつもなら、静かになにげない話をして隣にいてくれるだけだったけれど、あの日だけは違った。何か心に決めて固い意志を持って僕に言ったのはそういうことだったのか。


296 奈那子:そう。あのジンベイザメとの出会いは私にも大きかったの。

お腹の赤ちゃんを、そしてあなたを守って生きていくんだって一瞬にして覚悟が決まった。

だからそのままあなたに伝えなくちゃって。


297 唯成:あのときのお母さんは強くて、優しくて、暖かい光を僕にあててくれた。

その光を僕は浴びて、どうにかしなきゃいけないって、このままでいいのかって気付かされたんだ。


298 奈那子:あのあとすぐだもんね、プロポーズしてくれたの。


299 唯成:何かストンと重いものが落ちたんだ。自分がすべきことが見えた気がした。


300 奈那子:でも、大変だったよね、ここまでくるの。


301 唯成:まだ学生だったからな、僕は。 お金もないし、働くにしてもあてがない。


302 奈那子:うん。


303 唯成:もう後がない、失うものは全て失ったし、捨て身でがむしゃらにやった。


304 奈那子:そしたら、あるコンテストでいい賞もらえてね。ほんとよかった。


305 唯成:あそこが人生の転換期だったんだな。


306 奈那子:がんばったね、お父さん。


307 唯成:お母さんもよくがんばったな。ありがとう、僕のそばにいてくれて。そして僕を見捨てないでくれて。


308 奈那子:ふふ。こちらこそ新しい命を授けてくれてありがとう。

……ねぇ、ちょっと手を繋いで歩かない?


309 唯成:恥ずかしいだろ。


310 奈那子:えー、昔は繋いでくれたのに。


311 唯成:昔は若かったから。


312 奈那子:私たちもまだまだ若い方だと思うよ?


313 唯成:……じゃあ、大学の校門までな。出入り口のとこ。


314 奈那子:やった。はい、手を貸してください。


315 唯成:はぁぁ、恥ずかしいな。……ほら。


(手を繋ぐ)


316 奈那子:ふふ。照れるね。


317 唯成:だから言っただろ。


318 奈那子:もうちょっとで校門に着くから。そこまでは繋いでて、お願い。


319 唯成:わかった。約束だからな。


320 奈那子M:校門に近づいたら手を離すのが少し悲しくて思わずぎゅっと手に力を込めて握ってしまったのだけれど、言葉とは裏腹にちゃんと強く握り返してくれた。口数が少ないあなたの精一杯の気持ちだと伝わって涙が出そうになったのは内緒。



【自宅にて】


321 唯成:おはよう。今日は日曜だよ。

……薬が効いてるからまだしばらく起きないか。


322 唯成M:去年、彼女が余命半年の告知を受けた。

最期は自宅で過ごしたいという本人の希望により今は家で過ごしてる。

しばらく前に、あるノートを見つけた。

机の上にあるのが目に入り、見つけたときのことを思い出す。

もうあまり動けなくなった君の代わりに部屋の掃除をするようになって、そのときタンスの引き出しから発見したノート。

そういえば入院してた時にノートを買ってくるように頼まれたっけ。


323 唯成:これって…。


324 奈那子:「死ぬまでの一週間でやりたいこと」

私はこの先もう長くはないと思います、

今は病院にいるけれど、死ぬときはできれば家がいい。

体も思うように動かなくなって、家のこともみんなに任せっきり。

ほんとにごめんなさい。

この前、バケットリストっていうのがあるって知って。

死ぬまでにやりたいことを書いておくものみたいです。

だから私もやってみようと思います。

普通は100個とかあげていくらしいんだけれど、私はそんなに思いつかないだろうから、

10個、いや一週間なにをしたいか七日分あげようと思います。


325 唯成:ふふ。なんか日記みたいだな。


326 奈那子:一日目…と二日目。「一泊二日で旅行に行く」


327 唯成:どこに行くか書いてないぞ? どこに行きたいんだ?


328 奈那子:三日目。「子供たちとお酒を飲む」


329 唯成:お酒って…、まだ高校生と中学生なのに。でも夢ん中なら一緒に飲めるかもな。


330 奈那子:四日目。「カフェをオープンする」


331 唯成:そういえば言ってたことあったな。カフェをやりたいって。だから、お店をデザインしてほしいって。


332 奈那子:五日目。「隣町の大きな花火大会に行く」


333 唯成:有名だからな、隣町のは。混んでるから避けてたけど行きたかったのか。


334 奈那子:六日目。「出会った頃の思い出の場所へ行く」


335 唯成:思い出の場所……。二人の思い出の場所なら、出会ったあそこしかないだろうけれど。自信ないな…男ってこういうの外したりするんだよな。


336 唯成M:君のやりたいことはどれもすぐ叶いそうなものばかりだ。

体が元気に動くのなら、できれば全部叶えてやりたいのに。


337 唯成:七日目は…。


338 小春:お父さん、おはよ。


339 唯成:おはよう。


340 小春:お母さん、起きてる?


341 唯成:いや寝てる。強い薬を使ってるからなかなか起きられないみたいだ。


342 小春:そっか。お母さんとお話ししたいな。


343 唯成:できるよ。そのうち目は覚めるさ。だってまだまだやりたいことがあるみたいだよ。ほら。


344 小春:なに?このノート。「死ぬまでの一週間でやりたいこと」?


345 唯成:そうらしい。


346 小春:子供とお酒??私たちまだ飲める年齢じゃないよ?


347 唯成:ふふ、うん。だから「やりたいこと」なんじゃない? お前たちが大人になるまで生きるつもりなんだよ。


348 小春:そっか。私もお酒飲みたいな、お母さんと。その時はどんな話するんだろ?ちょっと楽しみ。


349 唯成:そうだな。


350 唯成M:子供たちも母親のこの状態を見て、それは叶わないとわかってるだろう。

でも、精一杯の強がりで、ほんの少しの希望をもって、冗談混じりで話してくれてるに違いない。

そんな優しい子に育ててくれたのも彼女には感謝しかない。


351 拓海:……はよ。


352 小春:お兄ちゃん、起きたんだ。早いね? 珍しい。


353 拓海:俺だってたまには。午後から部活あるし。


354 唯成:ほんとは母さんのこと、気になってるんだろ?


355 拓海:……まぁ、そんな感じ。


356 唯成:部活に行くまでいっぱいそばにいてやれ。お母さん喜ぶ。少しなら起きられるかもしれないしな。


357 拓海:うん、話しかけたりしていいんだよね?


358 唯成:あぁ、いっぱい話してあげて。



【自宅にてその後】


359 唯成M:今日はうっすら雨模様。何か起こりそうな不穏な天気だ。雨上がりに虹でも出てくれれば気分も良くなりそうなものだが。

あれから二週間。彼女はだんだん弱っている気がする。


360 奈那子:……ん。 んー。


361 唯成:……お母さん? ……奈那?


362 奈那子:…あ…なた。


363 唯成:おはよう。っていうかもう昼だけど。どうだい?調子は。


364 奈那子:わ…かん…ない…。


365 唯成:そっか。


366 奈那子:なんか色々やりたいことできてよかった。


367 唯成:やりたいこと?……夢でしてきたの?


368 奈那子:夢?…夢だったのかなぁ。なんかごちゃごちゃになってる…かも。


369 唯成:本当に色々行ってきたりしたのかもな。


370 奈那子:ふふ、そうかも。そうだといいな。


371 唯成:だな。


372 奈那子:なんか…長い…、ながーい夢を見ていたような気がする。


373 唯成:楽しい夢?


374 奈那子:うん。旅行したり……大人になった拓海と小春に会ったり。…あなたと手を繋いだり。


375 唯成:そうか…。手? こうやって繋いでた?


376 奈那子:…ふふ。うん。 楽しかったなぁ…。幸せだった。


377 唯成:夢が?


378 奈那子:夢も。……私の人生も。


379 唯成:人生って。


380 奈那子:来世でもまた出会えるかしら。


381 唯成:会えるさ。


382 奈那子:もっといっぱい…いっぱい一緒に過ごしたかったなぁ…。


383 唯成:まだまだ一緒にいる。


384 奈那子:昔はこうやって手を繋いでたのにね…。子供ができてからは子供たちと手を繋ぐ方が多かったから。


385 唯成:子供たちを真ん中にして4人で手を繋いだっけな。


386 奈那子:そう。横一列になって。


387 唯成:今考えると、他の人の邪魔になってただろうな。


388 奈那子:自分たちが楽しいと周りって見えなくなるものね。


389 唯成:教訓にするよ。


390 奈那子:あなたの手ってこんなに大きかったっけ…。


391 唯成:奈那の…、奈那の手がちっちゃく…なったのかもな。


392 奈那子:泣いてるの?


393 唯成:……いや?


394 奈那子:大丈夫よ、あの子たちがいるわ。


395 唯成:奈那がいない。


396 奈那子:あなたに温かい家族を作ってあげたかったの。私、……できたかしら?


397 唯成:あぁ。もう一人じゃない。


398 奈那子:ふふ。よかった。 じゃあ、私、幸せよ。


399 唯成:うん、…うん。 まだ逝くな。


400 奈那子:ふふ、ちょっと眠たいだけよ。だから、……だからずっと手を握っていて…ね。


401 唯成M:夢で手を繋いだ話を聞いた途端、今彼女の手を握らなきゃ後悔する気がした。弱々しく僕の手を握る彼女の手をぎゅっと握り返しながら、声を出して泣いてしまいそうになった。

このあと交わした会話はひとつかふたつ。彼女は静かに眠るように空へ旅立った。



【火葬場にて】


402 拓海:父さん。


403 唯成:ん。どうした?


404 拓海:母さん、虹になったんだね。


405 唯成:虹?


406 拓海:ほら、あそこ。


407 唯成M:息子が指差す方向の空を見ると、火葬場の上空でさっきまで降っていた雨が止んで、目の前に綺麗な虹が出ていた。


408 小春:きれー…。今日の虹って七色が綺麗だね。


409 唯成:なないろ。…なな。奈那…子。 ふふ、そうだな。母さん、虹になったんだな。


410 小春:お母さんと名前が似てるもんね。


411 唯成M:死にたかった僕が死ねなくて、生きたかった君が生きられない。

世の中はなんて無情なんだ。

僕は君の最後の願いを叶えられたのだろうか。交わした言葉は少しだったけれど。

それしか叶えられなかったことが悔しくてたまらない。

ありがとう、奈那子。僕の人生に一緒にいてくれて。家族を作ってくれて。

……さよならは言わない。また会える日まで待ってるよ。


412 奈那子:七日目。 「あなたと手を繋いでお話ししながら、そっと旅立つ」



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