願うのはひとつだけ【男1:女1】

題名 『願うのはひとつだけ』
全年齢 男性1名女性1名 10分程度
太星(たいせい):就職と共に地元を離れていたが、今回帰省している。しっかりしてて同じ年ながらも2人のお兄さん的存在
芽依(めい):太星と小さい頃からの幼なじみ。地元に残って就職。悠生と付き合っている。
(悠生(ゆうき):芽依と付き合っている。→登場するがセリフはなし)

※同性恋愛の表現が一部あります。


男性2名ver.もございます

下記をコピーしてお使いください

題名「願うのはひとつだけ」
作:みつばちMoKo
太星:
芽依:
https://mokoworks.amebaownd.com/posts/32819522/


太星:あれ?あいつは? 
犬の散歩に付き合えっていうから来たのに。

芽依:コンビニ寄ってから来るって。あの公園に集合だって。

太星:まさか、またアレ買いに行ってんの? よく飽きないな…。

芽依:まぁ、先に行ってようよ。すぐ来ると思うから。

(犬を散歩しながら二人で歩き始める)

太星:変わらないな、この辺も。

芽依:いや、少し変わったよ。
あっちの通りの方とか新しい店増えたし。
まぁ、この通りは住宅街だから。変わった感じはしないよね。

太星:あぁ。あっちの奥の方行くと空き地だよな。
さらに裏山の方に続くところが深い段差になってるとこ。
あそこ、フェンス破けてたの直してあったけど、今もあのまま?

芽依:……うん。いやえーと、今はブロック塀で越えられないようになってる。
もう怪我人が出ないように。あのあとも、落ちた人がいたから。
たいしたケガはなかったみたいだけど。

太星:そっか…。


太星:よし、公園ついた。
あれ?まだあいつ、いないね?

芽依:そのうち来るでしょ。そこに座って待ってよ?

(ベンチに座る)

芽依:ねぇ。あの時…。
悠生があの段差におちて、気を失ってた時。
最初に助けたの、ほんとは太星だって悠生に言わなくていいの?
いまだに目を覚ました時にいた私が助けを呼んだって思ってるよ?

太星:…うん、いいんだ。
アレがキッカケかどうかはわからないけど、そのあとお前らが付き合うようになったんだし。
良かったんだよ、これで。
だって、あいつがお前を好きなのをずっと見てきたんだ。
お前がはっきりしないだけで、何か事が起これば上手くいくって思ってた。

芽依:正直ね…。本当のこと話して、悠生の気持ちが太星にいっちゃうんじゃないかって思って…。
同性どうしだからって言っても悠生が太星のこと人として好きなこと知ってたし。
何かのきっかけでそういうのに目覚めることあるでしょ?
私もずるいよね。だから、言えなかった。

太星:しっかし。自分の彼氏のことを好きな男を近くに置いとくかねぇ…?

芽依:当時はいろんな複雑な気持ちがあったけど…。
太星はさ…。太星は、悠生と私の幼なじみとって言う前に、私の親友だから。
太星は裏切ることは絶対しないっていう自信あったんだよね。
どっちの親も忙しいから、いっつも一緒に過ごしてきたし。戦友っていうか。
そんな簡単に恋愛のことで、切り捨てられないよ。
それに…。悠生のお父さん亡くなって塞ぎこんでた時、元気な元の悠生に戻したのは太星だしね。感謝してる。

太星:それはあの時俺が勝手に決めたんだ。
自分の想いをぶつけて、もう二度と近くにいられなくなるなら、このままでいい。
そばにいて、お前のことの相談もなんでも受け止めてやるって。
俺の一方的な想いでも、あいつが笑顔になれればそれでいい。
近くにいて、笑ってくれればいいって。
でも出来れば、その笑顔をつくるのは自分でありたいっていう俺のワガママ。

小4の時、俺らの家の前にあいつが引っ越してきて。
親同士が挨拶してる時、あいつ初めに何ていったか覚えてる?
「チョコレート、食べる?」だよ。
普通、自分の名前とか“よろしく”とか言うよな。

芽依:うん。すごいびっくりしたから覚えてる。
あれ、すごい甘かったからね。

太星:まぁ。いま考えるとあいつらしいっていうか。
ちょっと抜けてるからな。鈍感だし。
…まぁ、俺としては鈍感で助かったけど。

芽依:本当に鈍感なのかな…。
悠生あざといんだよ。知らないフリ、分からないフリしてた方がいいこともあるって悠生が言ってた。

太星:ん?どういう意味?

芽依:分からないならいいよ。
ねぇ…太星。本当に悠生のこと、吹っ切ってる?

太星:…なに。いきなり

芽依:親友の目、見くびんないでよ。
太星が長い間、悠生を見てきたように、私だって太星のこと見てきてるんだよ。

太星:何、言ってんの。俺はもうとっくに吹っ切ってんの。
それに今まで恋人だっていたじゃん。不毛な恋はもう懲り懲り。

芽依:ホント?信じるよ?
…もう今日しかないんだよ?もし伝えるとしたらラストチャンスなんだよ?
明日になったら、悠生はもう私のもんになるんだよ?

太星:…伝えることは何もないよ。お前らが幸せになってくれればそれでいい。
願うのはそのひとつだけ。
いろんな感情知れたし、感謝してるわ。

芽依:そっか。わかった。

太星:でも、人を好きになるのってさ、たぶん理由とか理屈とか通用しねーし。
その感情は意味や理由とかを吹っ飛ばして最強なんだよな…。
俺、学んだわ。何年もかかったけど。


芽依:明日、遅刻せずに来てね。

太星:式にはちゃんと行くよ。
パーティーには出れないけど。

芽依:パーティーに出れないこと、悠生に伝えるなって言うからそうしてるけど。
私、つらいんだけどな。
だって、パーティーで3人で写真とるって張り切ってるんだよ?

太星:仕方ないじゃん。海外赴任決まったんだから。
明日の夜の便で行くんだし。

芽依:…太星、…わざと明日の便にしたでしょ?
まだ、赴任まで日数あるくせに。

太星:ん?

芽依:ううん…。

太星:ちゃんと神様の前で誓い合うのを見届けるよ。
それで、やっとリセットできる気がするしな。

(悠生、公園に現れる)

太星:あっ。やっと来たな。
やっぱりあのチョコ買って来てる。

おせーよ。待ちくたびれた。

はぁ? なに?

あぁ、チョコ、食べるかって…?
お前、変わんないな…。 あーいや何でもない。
ひとつ、貰うわ。

ん…。昔よりちょっと苦くなったか…?

そんなに好きなの?

(悠生:「うん、好きだ」と返事)

そっか…。
ふぅ、よし。俺、先帰るわ。

芽依:えっ、今来たばっかじゃん。

太星:俺、これから髪切りに行くの。
明日、ビシっとスーツで行くんだし。

芽依:そうなの?
明日のためなら、引き止められないね。

太星:じゃあな、また明日。
あー…。伝えること、あったわ…。

悠生…。
結婚。おめでとう。
幸せにしろよ。そしてお前もちゃんと幸せになれ。
ずっと笑ってろよ。

芽依、…お前もな。頼むな。
     
あぁ、そのチョコ。向こうになかったら送って。
……懐かしくなったら食べるから。

じゃあな。


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