ノエル【男1:女1】

題名『ノエル』
全年齢 男性1名 女性1名  10分程度


奏多(かなた):会社員。仕事が忙しくなかなか休みが取れない。 
一華(いちか):会社員。奏多とは仕事上で出会う。強がり。

クリスマスの夜。遠距離恋愛のカップル。
仕事が忙しい彼氏は会うことが出来ないため、夜、彼女へ電話をかける。


下記をコピーしてお使い下さい

題名「ノエル」
作:みつばちMoKo
奏多:
一華:

https://mokoworks.amebaownd.com/posts/11844046/


奏多:はぁ……。さむっ。

   今、家にいるよな…。

  (電話をかける)

   もしもし?

一華:もしもし?
   奏多?

   お仕事終わったの?
 
奏多:あー、うん。
   今、帰るところ。

   ごめん…。
   もしかして行けるかなって思ってたけど、やっぱり無理だった。
   今日会えるように頑張ってみたけど、ダメだった。

   ほんと、ごめん…。

一華:大丈夫だよ。
   たぶん会えないって言ってたじゃん。
   だから、大丈夫。

奏多:何してた?

一華:今?
   テレビ見てたよ。

奏多:そっか。
   何か、面白いのやってた?

一華:んーと、なんかお笑い番組。
   さっき出てた人たち、面白かった。
   初めて知った芸人さんだったけど。

奏多:ふふ、そうなんだ。
   2人で見たらもっと面白かったかもね。

一華:……そうだね。

奏多:はぁー。寒いっ。
   今日、寒いよね。

   帰り道、暗いし1人だし。
   うちにつくまでこのまま通話してて。

一華:ん、わかった。

奏多:そういえば、プレゼント届いた?

一華:届いたよ。
   ありがとう。大切にするね。

奏多:そ? 良かった。

   …実はもうひとつあるんだけど、一緒に送れなかったから、
   今度会える時に持ってく。

一華:体調は大丈夫?

奏多:ん? 俺?

   うん、大丈夫。
   忙しいから倒れないように気を張ってるせいかもしれないけれど。

   軽い咳とか鼻水がでることはあるけど、ひどくならないし。

一華:そっか。よかった。
   でも、気をつけてね。
   奏多、帰ってソファーでそのまま寝ちゃったことあったし。
   
   まだこっちに住んでるころ、お風呂上がりに通話してたら
   寝落ちして、私、奏多んちまで起こしに行ったんだからね?

奏多:あったあった、そんなこと。
   気をつけます…。

   そっちこそ、大丈夫?
   風邪、引いてない?
   ちゃんとあったかくして寝てる?

一華:してるよ。
   モコモコ靴下も履いてるし。
   私、滅多に風邪ひかないもん。

奏多:ん。ちゃんとしてるなら良し。

   はぁ。クリスマスなんだね。
   街に出ると、売ってるものもお店の雰囲気もクリスマス一色でさ。
   イルミネーションっぽいとこで、手繋いでるカップルがいたりとかして。

   あー、俺も手繋ぎたいなぁって思いながら歩いてた。

一華:奏多、手繋ぐの好きだよね。
   いつも繋いでもらってるような気がする。

奏多:俺ね、一応、理想のクリスマスの過ごし方みたいのがあって。
   ありきたりなんだけどさ。

一華:どんな感じの?

奏多:えーとね。
   
   当日は午後から出かけるようにしてゆっくり準備する。
   まず一緒に映画を観に行くんだ。
   それで、そのあとお茶しながら映画の感想を言い合う。

   それで薄暗くなってきたら、イルミネーション点灯するところを
   ふたりで手を繋いで見て。
   そのあと、レストランでディナー…っといきたいところだけど、
   柄じゃないし、緊張するし。
   家でまったりする方が好きだから、チキンとケーキを買ってうちに帰る。

   ちっちゃいツリーの置物だけがクリスマスっぽい、あったかい家の中で、
   チキンとケーキ食べてゆっくりする。

   …夜はゆっくり抱くよ。
   いっぱいして、朝までずっとくっついてる。

一華:…いいね。
   すっごくいいなぁ、そういうの。

奏多:……はぁ。
   会いたいな。

   会いたい。

   ギュってしたい。

   エッチしなくてもいいからギュってしたい…

   …いや、してもいいならエッチしたいけどっ。

   でも…。
   抱きしめてるだけで幸せなのは嘘じゃないよ。

一華:…うん。

奏多:俺、考えたことあったんだ。
   抱きしめあうだけで気持ちいいし、安心するのはなんでかなって。

一華:それって真剣に考えること?

奏多:まぁいいじゃん。聞いてよ。
 
   抱きしめあうと、首の下から胸の上の間の部分が触れ合うでしょ?

一華:デコルテのこと?

奏多:うん、たぶん、そのデコルテっていうところかな。
   その部分ってさ、普段の生活では触ったり触られたりすることが
   ないところだよね?
   特別な人だから触れ合えるとこなんだよね。

   だから、お互いのその部分が触れ合うとき。
   手でも体でも、キスでも。

   触れ合うことを許し許された、特別で大事な人なんだって
   感じられるからだと思うんだ。

一華:うん、確かに…。

奏多:俺がよく抱きしめるのはそういう理由なんだと思う。

   だから、これからも何回だって抱きしめるよ。

   ……ふふ、ちょっと照れた。

一華:奏多…。

奏多:ただでさえ、頻繁に会えなくて一華を不安にさせてる。
   さみしい思いだってさせてるんだから、会えた時は
   いっぱい抱きしめさせてよ。

一華:さみしくないよ?
   今日もちゃんと連絡くれたじゃん。

奏多:いや、本当はさみしいって思ってるでしょ。
   昼間のLINEだって、あんな普段めったに使わない絵文字を
   いっぱい使ってるしさ。

一華:…私、そんなに絵文字使ってない?
    たまたまだよ…そんなの。

奏多:あぁ、無理させてる、我慢させてるなって思った。

   抱きしめたいなって。
   近くにいたらすぐ行けるのに。

一華:(鼻をすする音)

奏多:……今も泣いてるんだろうなって。

一華:…泣いてない。

奏多:だって、鼻すする音した。

一華:…してない。

奏多:してない?
   いや、見えないけどさ。

   いっつも強がるから…。
   
   まぁ、そうさせてるのは俺なんだけど…。


(インターホンが鳴る)

奏多:あれ?ピンポン鳴った?

   こんな夜遅いのになんか届いた?

一華:…誰だろ。

奏多:すぐ終わるよね?
   出ていいよ、待ってる。

   でもちゃんとインターホンで確認してから開けて。
   不審者かもしれないんだから。

一華:うん、ちょっと待ってて。

(一華インターホンをとる)

奏多:(インターホン越しに)遅くなってごめん。

   …ドア、開けて?

(一華ドアを開ける)

奏多:ほら、やっぱり泣いたでしょ。
   目、赤い。

一華:…なんで?
   来れないって言ったじゃん。

奏多:ふー、寒かった。
   ギュってしてあっためて。

  (抱きしめる)

   はー、あったかい。


   …チキンもケーキもないけれど、もう一つのプレゼントを
   お持ちしました。

   貰ってくれる?

一華:…ばか。

奏多:あーぁ。余計に泣かせちゃったな。

   最終の新幹線に飛び乗ったんだ。
   朝一でまた戻らなきゃだめだけど…。

一華:…奏多だ。
   ほんとに奏多だ。

奏多:…うん、俺だよ。
   
   んー。匂いがする。安心する匂い。
   今、腕の中にいるって実感できる。


   顔、あげて?

   メリークリスマス。
   いっぱい抱きしめに来たよ。


0コメント

  • 1000 / 1000